宮城県石巻市雄勝町

葉山神社と雄勝法印神楽

はやまじんじゃとおがつほういんかぐら

リアス式海岸で知られる宮城県石巻市雄勝(おがつ)町は、平地が少なく、小さな浜ごとに集落がつくられていたため、かつては「十五浜村」と呼ばれていた。ホタテ貝、ギンザケ、アワビなどの養殖がさかんで、平成23年(2011)2月には約1,600世帯、約4,300人が暮らす漁業の町だった。
ところが、平成23年3月11日に起きた東日本大震災の大津波によって町の建物の約8割が破壊され、250人近くの方が犠牲になった。復旧復興が進められているが、学校や病院、郵便局なども被災し、漁業も壊滅的な被害を受け、低地では住宅の建築許可が下りないこともあって、いったん外に出た人が戻ってくるのも容易ではない。

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◎葉山神社と雄勝法印神楽

 雄勝町大浜に鎮座する葉山(はやま)神社は中世に創祀され、石峰山(いしみねさん)山頂の石(いその)神社を遥拝する里宮として、また大浜地区の鎮守として崇敬されてきた。もともと少名彦名神(すくなひこなのかみ)をご祭神とし、薬師如来坐像と十二神将像をご神体とする薬師堂だったが、明治初期の神仏分離令により葉山神社となった。
 雄勝町では集落ごとに神社があるが、葉山神社はその中心的存在で、古文書約500点など多くの歴史資料を保管しており、地元の伝統芸能・雄勝法印神楽(おがつほういんかぐら)の拠点にもなっている。
 雄勝町では600年以上昔から法印と呼ばれる修験者が集まり、各神社の祭りで神楽を奉納してきた。神仏分離令以降それが民間に受け継がれ、昭和51年(1976)からは雄勝法印神楽保存会として活動を始めた。平成8年(1996)に国の重要無形民俗文化財に指定されている。演目の多くは日本神話を題材にしたもので、太鼓2台と笛1本のお囃子(はやし)にのせて、時に優雅に、時に勇壮に舞う。呪術的な足の踏み方など修験色が濃厚に残されている。
 葉山神社は海抜約15メートルの高台に社殿があったが、東日本大震災のとき天井まで届く大津波に襲われた。社殿は全壊したものの杉の大木に引っかかり、神宝や古文書などは流出を免れた。社務所は流されたが、2キロ先の船着場で屋根が発見され、神楽面2面と古文書が救出された。しかし、ほとんどの神楽面や楽器、衣装などは流出したり二度と使えない状態になり、雄勝法印神楽も壊滅的被害を受けた。

雄勝法印神楽

◎葉山神社上棟記念奉祝祭

 被災後、葉山神社の千葉秀司(ちばしゅうじ)宮司や役員をはじめ氏子のみなさんは一丸となって神社再建に邁進した。石巻市街地に住んだり仮設住宅で暮らすことを余儀なくされている氏子の方々も、神社で行事やお祭りがあると何を置いても駆けつけた。
 そんな熱意が実って、葉山神社は日本財団はじめ多くの支援によって社殿、社務所が再建されることになり、雄勝法印神楽も神楽面や楽器などが復元され、雄勝町各神社の例祭などで奉納が再開されるようになった。
 こうして平成27年3月28日、葉山神社は上棟記念奉祝祭を迎え、多くの参拝客が訪れた。上棟行事では、宮司あいさつ、笹川陽平日本財団会長、亀山紘石巻市長の祝辞ののち、槌打(つちうち)の儀、曳綱(ひきづな)の儀などが行われた。雄勝法印神楽は「道祖(どうそ)」「五矢(ごや)」「魔王(まおう)退治」「日本武尊(やまとたけるのみこと)」が奉納され、境内を埋めた参拝客は上棟を心からお祝いし、神楽を楽しんだ。

葉山神社上棟記念奉祝祭

◎葉山神社御社殿竣工奉祝祭

 平成28年9月、御社殿竣工奉祝祭が行われた。
 まず9月19日午後7時から本殿遷座祭が斎行された。仮殿での神事のあと、満天の星空のもと、神職や氏子など約40人が行列して遷御が始まった。新しい御社殿は以前より約10メートル高い場所に建設された。
 9月20日には竣工奉告祭が行われ、神楽12番と能舞、獅子振りなどが奉納された。9月26日は石神社と葉山神社の秋季例祭が行われ、神楽が8番奉納された。27日は御社殿竣工記念植樹祭のあと、神楽6番と獅子舞や邦楽が奉納された。この3日間でさまざまな芸能が奉納されたが、雄勝法印神楽保存会によって現在伝えられている神楽24番がすべて奉納されたことは特筆に値する。中には28年ぶりに舞われた演目もある。経験者に尋ね、古文書を解読しながら復活させた。「震災で大変でしたが、私たちの代で途絶えさせることはできないと思ってやってきました」と保存会の高橋幸一会長。神楽師の方たちの意気込みが伝わってくる熱演だった。
 氏子総代の千葉勝昭さんは、「前と同じ規模の社殿が立派に出来上がって、本当によかった。大浜の神楽は神楽師が全員集まっていちばん華やかにやるものでした。それがこれからも継続されると思うととてもうれしい。近くに住む人はもちろん、震災で地元から出て行った人たちも来ていっしょに神楽を見ているのが何よりうれしいです」。
 千葉宮司も、「神社は建物が建ってもおまつりをやらないと始まりません。こうして盛大なおまつりができて、多くの方が集ってくださって、感謝の一言です」と喜びの表情を浮かべていた。
(原 章)

御社殿竣工奉祝祭御社殿竣工奉祝祭神楽

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