岩手県大船渡市

西舘七福神保存会

にしだてしちふくじんほぞんかい

西舘七福神は五穀豊穣、大漁萬作、商売繁盛、無病息災を願って子どもが踊る伝統芸能。大黒天、恵比寿、福禄寿、毘沙門天、寿老人、弁財天、布袋和尚の七福神に扮した小中学生が、道化の仕草を交えながら踊ると、会場には温かい笑い声が広がった。

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◎大船渡市郷土芸能まつり

 平成24年(2012)11月3日、岩手県大船渡市民文化会館リアスホールで第42回大船渡市郷土芸能まつりが開催された。東日本大震災では大船渡市も甚大な被害を受けた。今年の郷土芸能まつりは11団体が参加、末崎町の西舘七福神は5番目に登場した。笛と太鼓のお囃子に合わせて小学生から中学生までの子ども七福神が、新調された衣装を着て踊る姿はあどけない。やがて、七福神1人1人の舞いが始まり、会場には笑い声が広がった。

恵比寿

◎笑ってもらうのがいちばんうれしい

 七福神は、大黒天、恵比寿、福禄寿、毘沙門天、寿老人、弁財天、布袋和尚で、昔から子どもたちが演じてきた。弁財天を演じているのは紅一点の小学校5年生の女の子。大きな見せ所は恵比寿が魚を釣りあげる演技。幼い福禄寿の仕草では会場に笑いの渦が起こった。
 「七福神の舞いは、みなさんに笑ってもらうのがいちばんうれしいことなんです」と西舘七福神保存会会長の武田隆さん(64)は言った。
 西舘七福神の歴史は古い。末崎町の伝説によると、鎌倉時代の北条時頼のときにご神体、みこし、楽器を乗せた船が音楽を奏でながら泊里(とまり)浜に漂着した。そのときご神体をお祀りしたのが熊野神社だった。以来600年以上にわたり、熊野神社の祭りで奉納されてきた。日常生活を営むうえで、五穀豊穣、大漁萬作、商売繁盛、無病息災を願わない人はいない。七福神の舞いはその守り神として踊られるという。

武田隆会長

◎イベントの1カ月前から踊りを練習

 武田会長によると、西舘七福神保存会のメンバーはいま20名、そのうち子どもが10名で女性が3名。七福神舞いは、4年に1度、旧暦9月14日の熊野神社式年祭のときに奉納されるほか、碁石観光祭、大船渡市郷土芸能まつりなどで踊られる。踊りの練習はイベントの1カ月前から始まり、金曜日以外の連夜行う。「道化の動作がむずかしく、子どもたちですから、集中できるのは1時間くらいですね」。
 西舘七福神が踊られていた地域の一部が津波に襲われ、装束、笛、太鼓を保管していた建物が流されてしまった。また、メンバーの1人が津波の犠牲になった。被災直後、武田会長はこれからどうやって継承していったらいいか見当がつかなかった。そのとき、まつり応援基金の話を聞いて申請をし、装束、笛、太鼓の支援をいただいたという。
 太鼓は、大船渡市にある新川靴・太鼓店の新川徳男さん(74)に注文した。武田会長は「注文して太鼓ができるまで約半年かかりました。太鼓の音は以前と比べるとやや低いのですが、なかなか立派なものです」という。

熊野神社

◎子どもたちの育成のためにも

 今後の活動をお聞きすると、「もっと積極的にいろいろな場所で公演活動をしてゆきます。この歴史ある伝統文化を絶やさないで代々伝えて、みなさんの思いをつなぎます。応援していただいた方々、地元の方々に見ていただき喜んでもらいたい。子どもたちの育成のためにも続けてゆきたいですね」。
 公演が終わって楽屋に行くと、子どもたちのまわりに親御さんが集まっていた。子どもたちに公演の感想を聞くと、「大勢の前で踊るのはとても緊張しました。踊りは難しいけど、また踊りたいです」と元気な笑顔で答えてくれた。
(須田 郡司)

ほっとした表情の子どもたち

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