岩手県釜石市

尾崎青友会

おさきせいゆうかい

岩手県釜石市は、毎年10月第3週の週末に開催される「釜石まつり」のとき、1年でもっとも活気づく。神輿の海上渡御(「曳き船まつり」)と陸渡御が行われるが、この祭りの主役のひとつが虎舞だ。虎舞は簡単に言えば獅子舞の虎バージョンで、囃子やかけ声に合わせて、飛んだり跳ねたりじゃれ合ったり、虎の動きを模しながら縦横無尽に踊り回る。東日本大震災の打撃を乗り越えようとするパワーには圧倒される。

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◎祭りがなければ復興への意欲も湧かない

 岩手県釜石市では、毎年10月第3週の週末に「釜石まつり」が開催される。海の神を祀る尾崎(おさき)神社と新日鐵住金の守護神社である山神社(さんじんじゃ)が合同で行う祭りで、このとき釜石が1年でもっとも活気づく。
 釜石は豊かな漁場と日本の近代製鉄発祥の地として有名だが、近年は漁業の衰退、鉄鋼業の斜陽化などで人口も減少傾向にあった。そこに起こった東日本大震災の打撃ははかりしれない。しかし、そんなまちだからこそ、祭りにかける人々の思いはひとしおだ。

尾崎神社

◎虎舞は三陸沿岸部で盛んな伝統芸能

 平成24年(2012)10月19日から21日にかけて、震災後2度目の釜石まつりが行われた。
 浜町(はまちょう)の高台にある尾崎神社で宵宮祭の神事が執り行われた19日、近くの尾崎公園では虎舞の団体、尾崎青友会の中学生や高校生が稽古をしていた。指導しているのは尾崎青友会OBで釜石虎舞保存連合会会長でもある岩間久一氏(56)だ。
 虎舞は三陸沿岸部で盛んな伝統芸能で、釜石には14の団体があるという。簡単に言えば獅子舞の虎バージョンで、1頭に2人が入り、お囃子やかけ声に合わせて、飛んだり跳ねたりじゃれ合ったり、虎の動きを模しながら縦横無尽に踊り回る。
 岩間会長によると、尾崎青友会の会員は現在約50名だが、その人たちが住んでいた地域は東日本大震災の津波でほぼ潰滅した。「うちの会でも2人が亡くなっています。そいつらの分まで頑張らねば、と思ってやっています」。しかし、いまは仮設住宅に住んでいる会員も多いので、稽古に集まるのも大変だ。

岩間久一会長

◎釜石まつりのハイライト「曳き船まつり」

 20日は釜石まつりのハイライト、尾崎神社神輿(みこし)海上渡御(「曳き船まつり」)が行われた。尾崎神社は漁民の信仰が厚い神社だ。浜町にあるのは里宮で、奥の院と奥宮、本宮は尾崎半島にある。ご神体は奥宮に祀られているため、年に1度、お召し船で御霊(みたま)をお迎えに行く。そのとき、神楽船や虎舞の団体などが乗るお迎え船が何隻も出て海上がにぎわう。
 朝10時、13隻の船が釜石港の新浜町埋立地岸壁を出港、快晴の空のもと大漁旗をはためかせ、尾崎半島の青出浜(あおだしはま)に向かった。御霊が神輿に移され、釜石港に戻ると、船団のパレードが始まる。お召し船が近づくと人々は手を合わせる。神楽や虎舞が船の上で勇壮に舞い踊ると、観客は歓声をあげ、拍手をし、手を振る。みんなうれしそうだ。午後1時ごろ神輿は陸に上げられ、里宮に向かった。

曳き船まつり

◎釜石虎舞フェスティバル

 20日は釜石虎舞フェスティバルも開かれた。歯切れのいいお囃子、威勢のいい掛け声に乗せて、「遊び虎(矢車)」、「跳ね虎(速虎)」、「笹喰み」などの演目が次々と披露される。
 虎舞フェスティバルが終わると、地元の団体はそれぞれの拠点に戻り、1軒1軒虎舞をしてまわる門打(かどう)ちを行う。
 震災では山車(だし)や太鼓、虎頭(とらがしら)が壊れたり流失した団体も多い。「虎頭は自分たちで造りますが、山車や太鼓などは自力で何とかするのはとても無理。ですから、日本財団さんには本当に感謝しています」と釜石虎舞保存連合会事務局の菅田靖典さん(55)。
 岩間会長も、「新造したばかりの尾崎青友会の山車も津波でだめになりました。まつり応援基金のおかげで連合会の各団体の山車や宮太鼓・附太鼓を造ることになり、ありがたいと思っています」。

門打ち

◎伝統芸能を受け継ぐ子どもたち

 21日朝、尾崎神社、山神社両社から神輿が出発、神楽や虎舞、鹿踊(ししおどり)、七福神などが加わり、釜石駅前の「シープラザ遊」を目指す。ここで両社の合同祭が行われたあと、釜石港への陸渡御が始まる。途中、要所要所で神事を行い、虎舞などが奉納される。虎舞フェスティバルが開かれた会場で最後の神事と奉納が行われたあと、神輿は再び船に乗せられ、ひっそりと奥宮に還っていった。
 釜石でよく目にしたのは、3、4歳の子どもが熱心に虎舞を見たり、楽しそうに太鼓を叩いている姿だ。只越虎舞の佐々木毅さん(57)によると、幼いころから虎舞に憧れ、虎舞の団体に入ってくる子どもは珍しくないという。そうやって伝統芸能が次の世代に受け継がれていくばかりでなく、震災の経験も語り伝えられ、地域の絆を強める上でも大きな役割を果たしていくにちがいない。
(原 章)

只越虎舞

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